「薬物乱用」の意味を誤って理解していた

 『九条の大罪』を読んでいたら話の中にコカインが出てきて、ふとコカインとヘロインの違いが気になった。

 

 コカインといえば白色の、鼻から吸うと気持ちよくなる魔法の粉というイメージがある。一方でヘロインにも、同じく白色の鼻から吸うと気持ちよくなる粉というイメージがある。

 もしかしたらコカインとヘロインは同じ物質で、地域によって呼び名が違うだけなのかもしれない、と思った。今川焼きと呼ばれる食べ物を大判焼きと呼ぶ地域もあるように、東日本ではコカインの呼び名で親しまれ、西日本ではヘロインの呼び名で親しまれているのかもしれない。東日本では正月になるとおばあちゃんが「コカインできたよ~みんなで吸っぺ。吸っぺ。」と食卓に現れるのに対し、西日本の正月には「ヘロインこーてきたから。みんな吸いんされ、な?気ン持ちええぞ~」という声が聞こえるのかもしれない。

 

 気になったので調べていると、愛知県警のサイトにたどり着いた。愛知県警によると、コカインとヘロインは同じ白い粉ではあるものの、原料が違うらしい。コカインはコカの葉からできている白い粉で、ヘロインはけしからできている白い粉だそうだ。

 

 愛知県警が分かりやすくまとめてくれていたおかげでコカインとヘロインの違いは理解できた。しかし、また別の疑問が湧いて出た。「乱用」という言葉の意味だ。

 愛知県警のサイトには違和感を感じる部分があった。『乱用すると眠気や疲労感が無くなる』『乱用すると陽気になる』『乱用を続けると幻覚などの精神障害が現れる事もある』『乱用すると強い陶酔感を覚える』などの文からも分かるように、愛知県警は「薬物を使う」と同じ意味で「乱用」という言葉を使っている。僕はここに引っかかった。

 

 僕のイメージでは、「乱用」は「バカスカ使う」という意味を持っている。「乱れ突き」が「高速で相手を突き刺す技」である事からの連想で、「乱用」も「高速で何度も用いる」という意味を持っていると思っていた。

 薬物中毒の患者が時間の経過と共に薬物の使用量が増えていき、やがて薬物を買うために犯罪を犯すようになった。それくらいのレベルで日常的に頻繁に薬物を使用する行為を「乱用」と呼ぶと思っていた。ところが、僕の認識には誤りがあったようだ。

 

 調べたところ、「乱用」には「本来の使い方以外の使い方をする」という意味があるらしい。職権を本来の使い方以外の方法で使ったら職権乱用であり、例えばシンナーは吸うためのものではない(本来は塗料や燃料のために作られている)ので、それ以外の方法(吸引)で使う行為は乱用に値する。

 

 「乱用」は「本来とは異なる用途で使う事」。ひとつ賢くなれた。明日から何かを間違った方法で使っている人を見たら「乱用は良くないよ」と注意しよう。チワワに騎乗して街を行進している人を見たら「チワワの乱用はやめたまえ」、ティッシュを食べている人を見たら「ティッシュの乱用はやめなさい」、ファミチキで車を磨いている人を見たら「ファミチキの乱用はすべきでない」と言うのだ。

 

 いや、やっぱりやめておこうかな。チワワやティッシュやファミチキ乱用している人は怖い。そういう人は狂ってしまっている人だと思われるので、乱用をやめるように言っても逆上されるに決まっている。最悪のケースでは、チワワを使役して噛み殺されたり、ティッシュで絞め殺されたり、ファミチキで撲殺される可能性がある。狂人はそっとしておくのが一番だ。悪に立ち向かうのも勇気がいる行動だが、逃げるのも勇気ある行動だと『鬼門街』の校長先生も言っていた。年長者の言う事には耳を傾けるべきだ。